巷で話題の
巷で話題のNDM-1。
遠からず間違いなく日本にも来襲してくるし(もう来ているかも。私のお腹の中にも居るかもね)、気になったので、いくつか検索した事柄のまとめ。
概要
NDM-1はNew Delhi Metallo-beta-lactamaseの略。
酵素の名前である。
メタロβラクタマーゼは、カルバペネム系抗菌薬を不活化させる。
NDM-1の出現は、新たな多剤耐性菌の出現を告げている。
ニューデリーとインドの首都が入っているが、主にインド、パキスタンで発見され、あの周辺が起源と考えられるため。
誤解されるかもしれないが、NDM-1自体が新しい菌なわけではない。
NDM-1がE. coliとKlebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumanniiから発見されており、これらの菌に感染して抗菌薬の効かないものがある、ということ。
遺伝子は、プラスミドにコードされており*、菌相互間で遺伝子の水平伝播が起こる可能性が指摘されている。
なぜ最近有名になったか
ランセットにNDM-1が載ったから、と思う。
それを契機に、イギリスなどのメディアが報道し始める。
DailyMailとかBBCとか。
それが原因だろうと思う。
NDM-1の発見の契機
スエーデン国籍のインド出身の男性がインドのニューデリーに旅行、尿管に感染*。
それからインドの病院で治療を受け、退院、スエーデンに帰国**。
その患者からカルバペネム耐性のKlebsiella pneumoniaeが同定された。
これがひとまずペーパーになったのが2009年の6月10日。で、受理されたのが2009年9月10日。
感染症状
現在NDM-1はE. coliとKlebsiella pneumoniaeから発見されている。
だから肺炎と腸管の症状などが症状として出るが、そのうち抗菌薬の効かないものからNDM-1が検出されるかもしれない。
これまでの経緯
現在までに1名がNDM-1を持つ菌によって死亡したことが確認されている。
最初の犠牲者は、パキスタン旅行中に交通事故に巻き込まれ足に大怪我、パキスタンの病院で治療を受け退院、その後ブリュッセル市内の病院にて死亡している。
ブリュッセルの病院に入院した時点で、NDM-1保有菌に感染していたことがわかっている***。
関連菌
現在、Klebsiella pneumoniae、E. coliからNDM-1が見つかっている。
遺伝子は、プラスミドにコードされている*。
そのため、菌相互間で遺伝子の水平伝播が起こる可能性が指摘されている。
・Klebsiella pneumoniae: 肺炎桿菌。グラム陰性。ヒトの鼻咽喉・腸管常在菌。市井でもアルコール中毒者などにおいて肺炎を起因する場合があるが、通常健常人には無害。しかし、しばしば病院感染としての尿路感染、呼吸器感染、血流感染、手術部位感染を起因し、肺炎、敗血症をもたらす場合がある†。
・E. coli: 大腸菌。グラム陰性桿菌で通性嫌気性。腸内細菌の一。
ランセット*のとっても短い要約
NDM-1をChennai (チェンナイ; 南インドの代表都市)で44例、Haryana (ハリヤナ; 北インドの代表都市)で26例、イギリスで37例、他のインド・パキスタンの地域で73例分離した。
感染経路
医療ツーリズム、特に美容整形の為の渡航による感染がいわれている。
現在NDM-1感染者が確認されている地域‡
インド、パキスタン、オーストラリア、カナダ、アメリカ、オランダ、スエーデン、
対応策
GSK 299423が現在NDM-1保有菌に対して効果があるのではないかと期待されている§。
動物実験、人体実験は未だ報告されていない。
Note;
時間の流れとともに抗菌薬が効かない菌が出現するのは当然なのですが、こわいですね。
人や物の移動が、これまでに無い速度で進んでいる21世紀なので病気の伝播も速くなっています。
メディカルツーリズムが西洋のほうでは盛んのようで、それによる感染というパターンはこれまでの感染症に見られなかったものですね。
感染経路の究明や、更なる大規模な疫学調査が待たれます。
このNDM-1の動向は注視していきたいです。
NDM-1がより人間に対して為害性の強い菌にも見られるようになると、対策のうちようがありませんから恐ろしいです。
院内感染にならないように気をつけたい。
病気にならない体作りを心がけたいもの。
多剤耐性菌出現の問題点: 抗菌薬が効かない。つまり、感染症が治癒しない。人間の寿命が伸びた原因の一つは抗菌薬の発見。
βラクタム系は、ペニシリン系、セフェム系、ペネム系、カルバペネム系、モノバクタム系など。
特に、カルバペネム系は多剤耐性菌に対する最終的な切り札である。
βラクタマーゼは、βラクタム系を加水分解する酵素の総称である。
多剤耐性菌といえば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)が有名。
引用元、参考文献
*Yong D, Toleman MA, Giske CG, Cho HS, Sundman K, Lee K, Walsh TR. (December 2009). “Characterization of a new metallo-beta-lactamase gene, bla(NDM-1), and a novel erythromycin esterase gene carried on a unique genetic structure in Klebsiella pneumoniae sequence type 14 from India“. Antimicrob Agents Chemother. 53 (12): 5046–54. doi:10.1128/AAC.00774-09. PMID 19770275. PMC 2786356
**New superbugs spreading from South Asia: study
***Belgian man dies of South Asian superbug
†Dispatch/ヒトに常在する腸内細菌科細菌
‡Super-bug NDM-1: first known fatality, more infections worldwide – 引用元に不安が残ります。
§299423: GSK cites progress with a new-gen antibiotic
